第7章 こうち健康・省エネ住宅推進協議会とは
         
   
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   7-3 協議会の目指す方向
 
 
 住まい手である高知県民、特に高齢者など社会的弱者の方々に健康をもたらす、エコロジカルで省エネ性能の高い家をつくっていこうという取り組みにおいて、その原動力となる組織が「こうち健康・省エネ住宅推進協議会」である。
 協議会がポリシーとして掲げるのが「高知の山の木、高知の設計技術、高知の大工でつくり見守る」ことである。これは地域の財(人・材)によって支えられる。すなわち、地域の医療、福祉の実態と将来の予想に基づきながら、木材生産・設計・施工という一連の流れでつくられた住宅を地域の医療・福祉のケアを受けて持続的にメンテナンスしていこうという考え方である。そのためには行政の各分野からの支援はもとより、医療福祉機関、研究機関が行う、住宅と住まい手の健康データの収集・分析が必要となってくる。こういう多方面にわたる地域の人材と、木に代表される地域の材料で「健康・省エネ住宅」を支えていこうという仕組みが「高知モデル」であり、「こうち健康・省エネ住宅推進協議会」はこの「高知モデル」の確立と普及を目指すものである。
   
   7-4 ロードマップ
 
 
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 平成23年度作成の「こうち健康・省エネ住宅設計指針」において、現時点での疫学的知見を根拠にマニュアルを作成した。しかしこれは、住環境と健康維持増進の因果関係を客観的データに基づいて検証したものに立脚していると言うにはまだ不十分である。協議会の活動としては、平成24年度以降、疫学的調査規模の拡大と疫学的研究の深化を目指すことによって「住と健康」の因果関係を立証する上で貴重なエビデンスを得る事が望まれる。また同時に、木造建築、木質建材は居住者の心理、生理的状態などに良い影響をもたらすことが示唆されているが、より広い範囲におけるデータ収集と深い考察によって「木の良さ}が客観的に認識されることを目指していく。
 以上の調査研究事業は「健康・省エネ住宅を推進する国民会議」が主体となって採択を目指している林野庁の平成24年度事業「地域材供給倍増事業・木造建築物等の健康・省エネ等データ収集支援事業」において実践され、その研究成果が次年度以降の「こうち健康・省エネ住宅設計指針」にフィードバックされ、この設計指針がより有意義なものになっていくよう改定していくつもりである。
 当協議会においても、山口県の同協議会とともに、この林野庁の補助事業への積極的参加に向けて準備を行っているところである。
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 調査、研究活動の一方、健康・省エネ住宅の「高知モデル」を普及していくためには、バックキャスト的な思考をすることが必要である。すなわち一般消費者がプレハブ住宅メーカーの家ではなく高知県の「財」による「こうち健康・省エネ住宅」を選択するための価値判断基準を分析し、マーケットリサーチのうえ販売戦略を練るだと考える。そこで、現時点で考えられる販売キャッチフレーズを列記してみる。
①健康で長生きできる家
・疫学調査研究に基づいた高断熱住宅で室内温度差の是正を図りヒートショックを予防する
・高知県産の無垢材でつくることによって木が健康面に作用する影響を最大限に活用する
・高齢者に配慮した動線計画、間取り、段差解消、住宅設備、材料選択など
 ユニバーサルデザインを駆使した住宅
・調湿効果のある自然素材を多用することにより有害揮発性化学物質の発散を
 抑制するとともにインフルエンザウィルスの抑制のできる脱シックハウス住宅
・健康面における心的要因である生活実感、人間関係の豊かさ(コミュニティー)、
 生きがいを育み、自然と親しむことのできる家
②ローコストな家(長い目で見ればローコスト):リーズナブルハウス
・川上~川下を含め俯瞰的な取り組みによってもたらされる
 安価で高品質で安定供給が可能な木材の活用
・コストアップ要因(省エネ措置)を凌駕するランニングコストダウン
・コストアップ要因(健康対応措置)を凌駕する医療、介護費用のコストダウン
・上記の複合評価による割安感(コストパフォーマンス)の想起
・将来的には、「こうち健康・省エネ住宅」認定に伴う
 補助金、金利や税制の優遇への期待
③安心が買える家
・長期優良住宅の条件(省エネ対策、居住環境、耐震対策、維持管理保全対策、
 劣化対策など)以上の性能を有する家
・「こうち健康・省エネ住宅」認定建築士、認定工務店による確実な性能を担保する住宅
・万全のアフターメンテナンス制度の構築、通常のメンテナンスに加え、
 住まい手の健康状態、高齢化などによるライフスタイルの変化に伴う
 住宅リフォームの支援体制
・地域福祉(ケアマネ、SWなど)と連動した「ご用聞き」システムの構築による
 住まい手への「見守り」のできる住宅
④高知のためになる家
・地場産材、地場開発建材・商品を積極的に使用することによって
 高知県の産業振興に寄与する住宅(木材、漆喰、瓦、土佐和紙、石灰石、
 木質燃料ストーブ(ペレット・バーク)、木質系断熱材、木質系サッシなど)
・地域の雇用の拡大を図り、中山間地域の活性化を促す
・ストック機能を伴う、新しい製材、乾燥のシステムを導入することによって、
 木造仮設住宅部材が相当量確保でき、予想される震災津波対策に貢献することができる。
7-4-3 「こうち健康・省エネ住宅」による地域再生イメージ
 
 「こうち健康・省エネ住宅」の普及に関しては、この協議会が目指すものでありながら、マーケットリサーチ、販売戦略作成、営業など、言わば、高知独自の住宅メーカー的性格を持たざるを得ない。そのため、協議会とそのコンセプトや人的な側面でフェデレーションを組みながらこの事業を実践する新しい事業母体の構築を検討してみてはどうだろうか。
 新事業母体の第一義は上記に掲げた販売キャッチフレーズを一般消費者に明確に打ち出し、リフォーム事業も含め「こうち健康・省エネ住宅」の浸透を図り、一定の供給量を見出すことである。そして新事業母体は、本質的には木材流通の川上から川下、新たな開発を含んだ地場産建材、設計事務所、工務店、医療福祉機関を俯瞰的にとらえるべき性格をもっている。それゆえ、包括的にすべての局面で経済的なシミュレーションを行いながらも、決して利益のみを追求せず、むしろ各方面が健全に成長軌道に乗っていけるようなバランス感覚を持たなければならないと考える。そのためには、長期的な視野に立たなければならないという意味からも新事業母体は、これからの高知を担う若い世代の人達を中心に据えた活動を行っていくべきであろう。
 これらの動きは、「こうち健康・省エネ住宅」を切り口とした地域再生事業であることから、平成24年度より政府の定める「特定地域再生事業(地域再生計画)」の趣旨にのっとり、もし採択されれば活動を開始し活性化させるチャンスだと言えるだろう。
 
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第7章 こうち健康・省エネ住宅推進協議会とは
 
  「こうち健康・省エネ住宅推進協議会」
 の意義を高らしめるために
  こうち健康・省エネ住宅設計指針 2011
  1.住まいの環境と健康
  2.健康・省エネ住宅の必要性
  3.健康チェックリスト
  4.高知の財を活用する・地域材の活用
  5.こうち健康・省エネ住宅設計指針
  6.住まい方での健康省エネ
  7.こうち健康・省エネ住宅推進協議会とは
  リンク
  活動報告